夜を走る

夜を走る車の中はまるで映画館のようだ


上映している映画は


場面がコロコロと変わり


主人公は見ている自分だったりする


ロクでもない映画も


スクリーンに映ると


なんだか超大作みたいだなと


自分の人生を反芻してみる


信号で停止すると


ハイビームに照らされた


灰色の道路が


エンドロールにはまだ早いと


ごねているみたいで


私は


自分の物語を進めなきゃなと


とあるところで車から降りた


透き通った空気を吸い込み


生きていることを実感する


遠くの方で朝焼けが


いま産まれた赤ん坊のように


私たちを目覚めさせるんだ