僕の自由の始まり

朝日に顔を照らされ

起きてすぐ近くの喫茶店

コーヒーの香りに包まれながら

昨夜見た夢の続きを夢見る

昨日付けで会社を辞めた僕は

同期と一緒に

乾杯の宴を開いた

羨ましいけど心配だぜと

仲間内で一番おちゃらけてる奴が

見送りの時にそう言い放ったので

僕は飲んでた酒が一瞬引いたが


僕はとてつもなく自由を感じている

有給の二週間

だけの自由じゃなく

永久に僕は自由なんだ

馬鹿げた上司に吠えたり

残業代の出ない会社に唾を吐くことなく

僕はただキラキラとした目で未来を見ている

普段は無愛想なオーナーが

ニコッと笑った

コーヒーにはおまけで

猫の形のクッキーがついていた










無題

無題の中に


無益な言葉


多分


無題という本が出たら


そのセンスのなさに絶句するだろう


浅ましさと健気さと


毒の中の甘さ


甘さの中の毒


どちらが先でも毒は回る


新しい響きの中には


古さがあって


やがて錆びついて


ギトギトになって


両膝から崩れ落ちるみたいに


人類は滅びていくのだろう


ああ海は今日も輝いて


空はそれを黙って見つめている


平和が恒久に続くように


我々には願うことしかできない



映画鑑賞

ただただ時間を潰しただけの


つまらない映画


何が言いたかったのか


面白さが全然分からない


脚本には何も書いてなくて


監督からは何も指示がない


演者はプライドだけ持て余して


カメラマンはそれを映し続ける


幕が上がる時


私たちは元の家に帰る


人様の家に上がっていた


そんな気持ちになる


時代を経ても残る映画は


甘ったるい恋愛ドラマでも


笑い声が足されているコメディーでも


宇宙人が敵として描かれるSFでもなく


ただ残酷に


私たちの生活を映した


ドキュメンタリーなのかもしれない




世の中みんな仮装大会

SNSで仮装して


ブランド物身につけて仮装して


恋愛遍歴をひけらかして仮装して


自分の定位置から離れないように仮装して


顔のマスクが離れなくなった


昔あったなそんな映画


世の中みんな仮装大会


優勝者はほくそ笑んで泣いている


これは本当の自分じゃないんだと


心が裂けて死んでしまいそうになっている


廊下に響く怒号


校長先生が


マシンガンを撃ち続けて暴れてる


屋上から生徒が飛び出しては


見えないパラシュートに乗って空を飛ぶ


裏切られたと打ちひしがれて


路地裏でくたびれた猫よりも


沈んでいた彼女に


地雷が爆発する音が聞こえた


世界はやはり繋がっていたんだ


仮装とか仮面とかもうやめて


自分らしく生きようよ


子どもとか大人とか


男とか女とか


健常者とか障害者とか


そんな誰かが作った境界線を


トビウオのように飛び越えた生徒たちが


虹を作って街へと消えた







感 謝 感 動

好きとか嫌いとかで人を判断しないで


優しいとか楽しいとかで日常を彩って


苦しい辛いとのたうち回っては


結局いつものところに帰るの


ありったけの幸せは


手からこぼれ落ちちゃうから


人におすそ分けしたら良い


今日の夕日はとても綺麗だと


感じているのは


あなたの心がとても綺麗だから





さよなら

君からの返事は来なかった


なかなか冷たい人だ


僕だったら返事はちゃんと返す


物の良し悪しじゃなく


わざわざ持ってきてくれたことが嬉しいから


君の誕生日まであと少し


それ以降は僕だって


無視するんだ


そうしてお互いに忘れていって


僕より先に君が思い出して


泣けば良いんだ


君の存在を超えることなんて簡単だ


無難な職についてたって


運命に生きる僕は


君の大切にしてる常識とか


いとも簡単にぶち壊して先に進むから


さよなら


さよなら


さよなら